上智大学試験対策
上智大学の入試問題の特徴を一言で言えば、問題量が他大学と比べるとかなり多いということにあります。学部・学科によっては75個の設問を解かなければなりません。大量の問題を短時間でこなせるようになることが最大の目標です。
1.長文読解
(1)上智大学の長文読解問題の特徴
a.英文の「量」が他大学と比べて圧倒的に多い
数千語からなる超長文を毎回読む羽目になるということではありません。上智大学の場合、1つ1つの長文の量はそれほど多くありません。1回の試験で長文を何題も解かなければならないところに特徴があります。
したがって、かなりの「速読力」が必要とされます。じっくり読まなければ解けないような人は、かなり不利な立場に置かれていることになります。ましてや、1文1文を和訳しなければ意味が取れないような人は、全問題量の半分もこなせないことになるでしょう。10分か15分程度の時間で1つの長文をこなしていくぐらいの心構えを持ちたいところです。
b.長文の出典は現代的なものが多い
上智大学の入試において、いわゆる「頻出長文」が出題されることはめったにありません。この点にも、英語に対する上智大学の基本的な姿勢が現れています。英語は古文や漢文とは違った、現代の生きた言語ですので、常に新しい文献が創造され続けています。「頻出長文」のような「手垢のついた」文献が避けられる傾向にあるのもそうした理由からでしょう。同様の理由で、時事的な英文が出題される可能性は高くなっています。
c.長文の文構造は比較的平易なものが多い
このことは、b.で述べたこととも大きく関係しています。現代英語の大きな流れは、Write as you talkの方向に向かっているとよく言われます。つまり、現代の英文ライターは「普段話しているように文章を書くべきだ」というルールに基づいて英文を書くことが多いのです。
昔の難解で華美な文体と比べて、現代の英文はかなり読みやすい構造を持つようになっています。「頻出長文」の中に多く見受けられるような複雑な構造を持ち、右から左へひっくり返して和訳しなければ意味を把握できないような英文は、上智大学には余り出題されてはいません。したがって、速読に適した文章が多く出題されていることになります。
(2)上智大学の長文読解問題を解く上での心構え
a.一文ずつ和訳しながら解く方法をやめる
英文を読む際にすべての文を和訳しなければ文章の意味をつかめないと思いこんでいる人がいるようです。英米人が母語である英語で文章を読むときにいちいち「日本語」に訳す人など、存在するはずがないので、この悪しき習慣は早急に改める必要があります。「全文和訳法」はとても時間がかかるので、全文を訳したりしていたら、全体の半分も終わらないうちに制限時間が来てしまうでしょう。
b.長文問題は時間を決めて解く
長文問題は辞書や参考書をひもときながら時間をかけて読むものではありません。設問を解く時間は限られています。しかも、未知の単語や表現があっても自力で正解を見つけなければならないのです。そのためには、普段から「予行練習」を励行することが必要です。
1つの長文に制限時間を設け(普通の長さであれば10~15分)、その時間を厳守してください。わからない単語や表現の中に設問に関するものがあっても、文脈から意味が推測できるものが多いはずです。気になる箇所があったら、解き終わってからじっくり調べればよいでしょう。
c.精読に加えて多読も励行する
入試問題の他に、やさしめの文章を辞書を引かずに多量に読む習慣を身につけることも有益な方法です。わからない単語は推測しながら読むことになるので、あまり高度なものは好ましくありません。文章は自分の興味のあるテーマのものを選びましょう。
興味があればそれだけ楽しく読むことができますし、その分野の「背景知識」もあるので、未知の表現も推測しながら読み進むことが可能です。関心のある出来事や大きな社会問題が生じた場合には、インターネットで英語ニュースを読むことも多読のよい訓練になります。
また、好きな映画などがあれば、それを土台にした小説(novelizationと呼びます)や、語彙数を制限したgraded readersなども書店の洋書売場やインターネットで簡単に手に入ります。現在は電子書籍でもgraded readersの多くは入手可能です。
2.単語
(1) 上智大学の単語問題の特徴
上智大学の単語問題は難解な語彙が出題されることで定評があります。通常の入試レベルをはるかに凌駕するような単語問題が出題されることもあります。
語彙はすぐに豊富になるわけではありません。「語彙が貧弱だから市販の単語集だけやっておけばいい」というのは、上智大学入試に関する限りは得策とは言えません。単語集の単語だけで満足せずに、長文の中で出会った重要な単語を積極的に覚えようと努力して欲しいと思います。長文の中では文脈を通して意味が把握できるので一層記憶に残りやすいと言えます。
また、基本的な単語でありながらさまざまな意味を持つ多義語の意味を問う問題もよく出題されています。重要な多義語の基本イメージをつかみ、そこからさまざまな意味が派生することを理解すると記憶に定着しやすくなります。
3.イディオム
上智大学のイディオム問題の特徴
イディオムに関しては、どのような大学でも出題されるような基本的なものを、徹底的にマスターすることから始めることです。上智大学では、一般の受験生にとって難解と思われるようなイディオムが出題されることがあり、そうしたイディオムは市販の熟語集でも扱っていない場合があります。
しかし、そうした「特殊」なイディオムばかりを追い求めるのは賢明なやり方ではありません。それこそ、無限のイディオム暗記に挑戦することになってしまいます。イディオムの知識は多いに越したことはないのですが、問われているイディオムの意味を仮に知らないとしても、文脈から正解を導き出すことが可能な場合も多いことを覚えておいてください。
4. 文法・語法
(1)上智大学の文法・語法問題の特徴
上智大学の文法・語法問題はさまざまな形式で出題されていますが、近年は以下のA,BあるいはCの形で出題されることが多いようです。極めて難易度の高いマニアックな文法・語法ばかりが出題されるわけではなく、非常に基本的な知識が問われる問題も多いので、学習を始める際には問題形式にとらわれることなく、文法・語法の基礎力を身につけることが肝要です。
- A. 短文下線部間違い探し
- ⇒短文に下線が引かれていて誤りのある箇所を指摘させる正誤問題形式です。
- B. 長文下線部間違い探し
- ⇒以前の問題形式に比べて比較的短くなっていますが、英文の内容に流れがある点は以前と同じです。
- C. 整序問題
- ⇒語句を並べ替えて正しい英文を作る問題です。日本語が与えられている場合と与えられていない場合があります。正しい文法・語法・構文の力が身についているかどうかが問われています。
- D. 適語句補充
- ⇒他の私立大にもよく見られる四択式の問題です。時に非常に微妙な問題もあるので要注意です。
(2)上智大学の文法・語法問題の対策
上記の通り多種多様な問題形式に対応するのにはどうしたらよいのでしょうか。形式がどのようなものであれ、すべての問題形式に有効な対策として以下の方法が考えられます。
1.基本的な文法・語法知識をきちんと身につける。
確かに上智大の文法・語法問題は難しい場合もあるのですが、一方で「基本的な文法・語法の知識」も必ず問われます。ですからまずは「頻出文法・語法の知識の習得・演習」が優先するべきです。一例を見てみましょう。誤りのある箇所を1つ指摘してください。
例: In 2012, the writer Jhumpa Lahiri moved to Rome and (a) begun a period of (b) self-imposed linguistic exile (c) from English. She stopped speaking, reading, and writing the language (d) entirely, the better to learn Italian.
(外国語・総合グローバル)
2012年という過去の出来事なので、moved to Romeと過去形が使われているわけですが、同様に(a)も過去形でなければなりません。ところが、begunは過去分詞です。したがって、正解は(a)で過去形のbeganとなります。非常に基礎的な問題ですが、こうした基本が抜け落ちてしまっていることがあります。このような明らかな誤りには瞬間的に気がつく必要があります。
2.文意・文構造を正確に把握する。
「文法・語法知識」と並んで重要なのが「文意・文構造の理解」です。早速一例見てみましょう。誤りのある箇所を一つ指摘してください。
例:Today’s students (a) see themselves as digital natives, the first generation to (b) grow up (c) surrounded by technology (d) include smartphones, tablets and e-readers.
(外国語・総合グローバル)
主語はtoday’s students、述語動詞はseeという構造で、the first generation以下はdigital nativesを言い換えて説明している部分です。(d)のincludeという動詞そのものの形では構造的に誤っており、意味をつかむこともできません。smartphones、tabletsおよびe-readersは直前のtechnologyの具体例ですから、正解は(d)で、including ~「~を含む」という前置詞の形にします。
3.解答の根拠を明白にする。
対策段階では「いくつの問題に正解したか」よりも「どうアプローチしたか」というプロセスの方が重要です。つまり「なぜそれが正解か」また同時に「なぜ他の選択肢が不正解か」自分で指摘できるようにしておくことが大切です。
5.口語表現・会話
(1)上智大学の口語表現・会話問題の特徴
近年、高校などの英語教育の現場で重視されている会話能力ですが、他の大学同様に、上智大学入試でも重要なポイントを占めるものといえるでしょう。出題された問題を分析してみると、一般の大学よりもやや難易度の高い表現が出題されることもあるので、しっかりとした対策が必要です。
口語表現・会話表現に関する問題は主に2つのパターンに分類されます。
- (1)空所補充選択
- (2)空所補充選択〈短めの対話〉
(1)の空所補充選択はある程度の長さの会話文中に空所が設けられていて、その空所に入れるのに最もふさわしい選択肢を選ぶというものです。会話文問題で最も出題頻度が高いのが、この形式の問題ですが、これは単純に選択肢の英語の正確さだけではなく、前後の文脈を正確に読み取った上で解答する必要があります。
(2)は(1)の問題と同様に、空所を完成するものですが、非常に短い対話を完成するものです。文法知識と、慣用的な表現に対する慣れが必要とされます。
(2)過去の口語表現・会話問題によるタイプ別の分析と対策
会話文問題に対する具体的な対策としては、次のことに気をつけて学習を進めていくことをおすすめします。
a.できるだけ会話文に接するようにする
当たり前のことですが、口語表現・会話文に接する頻度を高めること。決まった形で用いられる表現を数多く覚えていればいるだけ、短時間で正解を導くことができるでしょう。イディオムなどもできるだけたくさん覚えましょう。
実際の試験においては、すべての選択肢の適否を細かくチェックするというよりも、最も適切なものを感覚的に選択できるようになっていることが望ましいのです。また、NHKラジオ・テレビの英語講座などを通して普段から多くの会話表現に触れる機会を増やしておくことも効果的です。
b.会話の状況をイメージする
どのような関係にある登場人物が、どのような場面で、どのようなことについて話をしているのかを必ず確認すること。発話の状況を常に意識しないと、単純なミスをしてしまうことになりかねません。さらに、高い次元を目指すには、かしこまった場面なのか、そうでないのかなども、必ず区別してほしいものです。
c.正解は文脈も意識して選択する
選択肢として与えられる英語の正しさだけではなく、前後の表現内容との整合性を常に意識すること。b.とも大いに関係することですが、必要とされる表現を選択するのに、必ずその前後との関係を念頭に置いてください。文脈を意識することで、容易に解ける問題が多いのもこのタイプの問題の特徴です。
TEAP利用型入試について
2015年度から、TEAP ( = Test of English for Academic purposes)「アカデミック英語能力判定試験」を利用した受験が可能です。
「読む(Reading)」、「聞く(Listening)」、「書く(Writing)」、「話す(Speaking)」の4技能すべてを計るテストで、年3回(7月、10月、11月)受験機会があり、最もよいスコアを提出することができます。
TEAPの概要やサンプル問題に関しては、日本英語検定協会のホームページを参照してください。