帰国生入試 概要
「帰国生」とは?
「帰国生」と一口に言っても、現地での滞在期間や保護者同伴であったかどうか、また現地高校を卒業したか否かなど、さまざまな状況があり、「帰国生」と認定するかどうかの基準は、大学・学部により異なっています。例えば、東京大学では3年以上の滞在、現地高校の卒業を要件としていますが、保護者同伴かどうかは不問です。一方、茨城大学では、高校の教育課程2年以上、保護者同伴であることを要件としていますが、現地高校の卒業は不問としています。帰国認定が非常に緩やかな上智大学では、小学校段階で途中帰国した人でも、滞在期間が4年以上あれば帰国生として認定される可能性があります。
また、最近の傾向としては、「帰国生のための特別選抜」という枠組みではなく、社会人も含めた特別選抜とか、9月入学のAO入試といったように、帰国生のみと限定せずに、広く募集していく選抜形態が増加傾向にあります。これは、かつて帰国生が入試対策の面で不利な立場にあることに対する配慮として、どちらかといえば消極的理由で制度化された帰国生入試が、昨今では帰国生かどうかという観点よりも、外国語の運用能力や異文化での体験を積極的に評価したいという流れが背景にあるとみてよいでしょう。このような選抜形態であれば、海外での滞在が1年未満の交換留学帰国生でも出願が可能です。
帰国生入試で問われる力とは?
どの学部を受験するにしても、帰国生であれば一般的に、外国語運用能力と異文化間コミュニケーション能力が期待されていると考えてよいでしょう。「異文化間コミュニケーション能力」をもう少し平たく言うならば、柔軟性や適応性です。海外で暮らし、異なる言語環境で学習してきた体験は、それだけでも十分価値あるものです。しかし、そのことが本人に意識されていないと、そのせっかくの体験が自分の強みとしてアピールできない、大学側から見れば、特別な選考をしている意味がない、といったことになってしまいます。
具体的にどのような試験を課すかは、大学・学部によって異なりますが、いくつかのパターンを提示しておきます。
- 1 事前に提出する書類
- 現地校での成績、学校からの推薦状、卒業証明書、統一試験結果や英語資格、志望理由書や活動報告書など
- 2 筆記試験や口頭試問
- 外国語、日本語、あるいは学科試験、小論文、英文Essay、あるテーマについてのプレゼンテーションなど
- 3 面接
- 志望動機や現地での体験などを日本語または英語で問われます。形式的な礼儀正しさよりも、大学で学問をするのにふさわしいかどうかといった観点で選考が行われます。事前に志望理由書などを提出した場合には、その内容に基づいて質問がなされることも多いので、志望理由書で書かれた内容と面接での受け答えに矛盾がないかどうかなどもチェックされます。
入試に向けてどのような準備が必要か?
1 現地校での成績を上げる
現地校での成績は良いに越したことはありませんが、かといって言葉のハンディを受けにくい科目(JapaneseやMusic, Artなど)ばかり履修するのは得策ではありません。帰国枠大学入試においては、成績の評定ばかりが問われるわけではなく、成績の推移や履修科目の内容なども考慮されるからです。一般に、数学や物理などの理系科目は、歴史などの文系科目よりも日本人にとっては良い成績を取りやすい科目と言えるでしょう。ちなみに慶應大学の経済学部や商学部では、数学の履修が必修とされており、アメリカ型のカリキュラムで学習されている方は、SATⅡのMathⅡCが要求されるので、現地校でも相当の数学を履修しておくことが望ましいと言えます。
また、卒業までの現地校での学習が3年に満たない人は、現地校での科目学習は、あらかじめ日本語で予備知識を習得しておくことが望ましいといえるでしょう。よほどの英語力を持ってから現地校に入学した人でない限り、英語で科目の学習をするのは、想像以上に大変なものです。予備知識でその分野の概略が頭に入っているだけで、英語での学習効果がかなり高まります。
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2 TOEFL®など英語資格試験のスコアを上げる
英語環境にいるから英語の勉強は大丈夫などと、侮っていませんか?ふだん現地校で学習している英語はコミュニケーション中心、あくまでも英語は道具として使用しているのではないかと思います。実用的なことを考えればそれで十分なのですが、大学側に自らの英語力を証明するにはTOEFL®などのスコアによるしかありません。英語を勉強する時間、特に帰国生が苦手とする英文法を勉強する時間をなるべく持つように心がけてください。
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3 出願する大学や学部を選ぶ
海外で学習している高校生にとって、進路についての選択肢は広く開かれていると思います。海外の大学へ進学するというのも一つですし、国内大学受験でも9月入学や4月入学など、数多くの受験チャンスがあります。しかし、逆に選択の指標をしっかり持っておかないと、情報を絞りきれずに収集がつかなくなる危険性もあります。海外での学習経験を通して、自分が伸ばしていきたい分野、また自分が秀でている能力などを自覚していくことが大切です。
国内大学を帰国枠で受験する場合、現地での滞在年数などの出願条件をクリアしているかどうかをチェックすることはもちろん、入学後のイメージをしっかり持って学部選びをするようにしたいものです(入学してから大学の英語の授業の易しさにがっかりしたなどという学生も多くいます)。たとえば、将来国連などの国際公務員を目指すといった場合、学士レベルの専攻を終えただけで卒業後すぐに採用されるという可能性は極めて低いと言えるでしょう。大学卒業後に海外の大学院で学ぶ、あるいは実務経験を積むなどといったことが必要になってくるかもしれません。そのようなケースであれば、大学のブランドや偏差値的難易度より大学時代に履修する科目やその成績に気を配る必要があります。
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4 志望理由書などの出願書類を用意する
9月入学を実施している大学に出願するのであれば、現地高校の卒業を待たずに出願準備をすることになります。上智大学国際教養学部、早稲田大学国際教養学部、国際基督教大学、慶応大学湘南藤沢キャンパス、筑波大学などでは9月入学を実施しています。これらの大学に出願を考えているのであれば、年明けには入試がスタートすると考えておいた方がよいでしょう。具体的には志望理由書や活動報告書(上智国際教養や早稲田国際教養の場合は英文で書く必要があります)などを書き、自己アピールをしていくことになります。
5 小論文や学科試験などの対策
現地校を卒業し、日本に帰国したら、9月以降に実施される帰国枠入試に向けて本格的な準備を開始しましょう。残された時間は少ないのですから、志望大学・学部に合わせた効率のよい学習をしていくことが大切です。例えば小論文の対策をするにしても、経済学部と文学部ではおのずと出題されるテーマが異なってきます。どの学部にも共通するような「論理的な文章展開」をマスターすることと、出願する学部に合わせた「テーマ知識」を習得することとを分けて考えるべきです。また、面接や口頭試問に向けて自己プレゼンテーション力を磨く必要もあります。独りよがりにならないよう、自分の体験やアピールポイントなどを第三者に客観的に見てもらうことも大切です。
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